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HubSpot社で見えた課題とこれからの展望|Shopify Japan 伊田聡輔さん

100田村(左)とShopifyJapan伊田さん(右)

「HubSpotのある生活」をテーマに、HubSpotを使っているユーザー、パートナーを問わず、「人」を軸にリアルな情報をお届けするORANGE100%(オレンジ100パーセント)。

今回は、Shopify Japan株式会社の伊田聡輔(いだそうすけ)さんと株式会社100代表の田村慶の対談記事をお届けします。

伊田さんはこれまで、DELL、Microsoft、Googleにてマーケティングや営業部門のリーダー職を歴任。その後2017年からはHubSpot Japan株式会社の共同事業責任者として、同社日本法人の立ち上げと営業部門全体をリードし、日本国内で数多くの事業者のデジタル化を推進。

HubSpotを深く知り、深く愛する二人に、HubSpotの課題感と今後の展開について熱く語っていただきました。

HubSpotのようなツールがどの現場にも必要だと思った

田村慶

伊田さんがHubSpot Japanにいらっしゃったときに、HubSpotのどういうところが課題だと感じられていましたか?

伊田聡輔

僕がHubSpotへの入社を決断した当時、「Googleを辞めてHubSpotに入社するのはやめたほうがいい」とたくさんの方に言われたんです。
「MAツールを導入したい企業なんてもうとっくに導入が終わってるから、需要が一巡しているし、これ以上拡がりが見えないよ」と言われたんです。

でも、僕自身は「そんなことはない」と感じていました。

当時MAツールを導入できているのは一部の大企業だけだと思っていたからです。年間1,000〜2,000万円規模の予算を使ってマーケティング活動を行える大企業はMAツールを導入できていますが、その規模の予算をかけられない企業もたくさんあります。

田村慶

伊田さんは「MAツールの将来性が限られている」とは感じられなかったということですね。

伊田聡輔

はい。入社前にHubSpotの無料版を自分で申し込んで利用したのですが、すごくいいツールだなと思ったんです。それにHubSpotというツールは、当時の日本法人の企業規模からすると日本向けのローカライゼーションがとても真っ当だと感じました。こんなに綺麗で一体感があって、きっとこういうツールがどの現場にも必要に違いないと。

その頃、オンラインマーケティングの書籍もいろいろと読んでみて、どの企業もHubSpotのようなツールを導入した方がいいと思いました。

それなのに、なぜ実際には導入されていないのだろう?と疑問に感じたんです。製品の質も良く、ローカライゼーションも真っ当で、思想も日本で受け入れられている。なにより、現場で必要性の高いツールなのに、それほど市場に浸透していない。

おそらく、「HubSpotが必要な人に対して、情報を届けられていない」からだと思いました。
HubSpot Japan自身がインバウンドマーケティングやインバウンドセールス、カスタマーサクセスをやり切れていなかったので、そこをやり切る必要があると感じていました。

「企業にとって見せたい情報」と「消費者が見たいと思っている情報」は違う

田村慶

当時「HubSpotを導入した方がいい」と感じた理由を教えていただけますか。

伊田聡輔

僕自身、HubSpotに入社する前にGoogleで広告運用をしていたのですが、その時に「広告の向こう側」を見た気がしたんです。

個人的に広告というのは買い手に必要な情報を提供する役割を果たすものだと考えています。

「買い手の購入行動に必要な情報=広告」であるべきだと思っていて、そうなっていないということは、情報を必要としている人に対して情報を提供できていないということ。つまり「企業にとって見せたい情報」と「消費者が見たいと思っている情報」は違うということを理解しなければなりません。

Google社でAdwordsをやったときに、当初この仕組みこそが「必要な情報=広告」を実現するための解決策かもしれないと思ったんです。例えばGoogleの検索エンジンで「軽井沢 1泊」と検索したら、軽井沢で1泊するための宿泊施設の広告が出ますよね。僕はその仕組みをすごいと感じたんです。

だから、「広告の向こう側」の世界をAdwordsが提供してくれるのではないかと思ってしばらくはGoogleでの仕事を続けていました。でも、長い間Adwordsを運用していると、理想との乖離が見えるようになってきて、必ずしも消費者が求めている広告が表示されるわけではないことも増えてきました。

そういう意味では、やっぱり「広告の向こう側」はコンテンツにあるのかもしれないと思いました。だからHubSpotのようなツールが日本で使われるべきだと感じたんです。

田村慶

そうだったんですね。

伊田聡輔

日本という国は、「広告=情報」がいろいろな意味で成り立っていない国のひとつなんです。地下鉄はもちろん、電車の車内にこれほど多くの広告があるのは日本だけです。街中のあらゆる場所にサイネージも多用されていますよね。しかし、こんなにもたくさんの広告に囲まれているのに、肝心の「情報」がないんです。

これだけ広告が溢れているにもかかわらず必要な情報提供が行われていないということは、無駄なマーケティング活動が行われているということでもあります。こうした企業と消費者の間に存在する課題を解決するにあたって、必要なものがHubSpotなのではないかと思いました。

田村慶

顧客にとってはシンプルに「情報」が必要なのに、日本は「ただ見せる広告」が主流になっているということですか?

伊田聡輔

そうですね。どのように見せれば「リーチする」かを主眼に置いている。この構図に最初は違和感があるのですが、自分も慣れてくると同じような行動を取ってしまう。HubSpotを使ってそこを変えていきたいと感じていました。

HubSpotの「ルール」よりも「価値観」を重視する姿勢が新鮮だった

田村慶

HubSpotに入社されてからは激動だったと思いますが、以前働かれていた企業と異なる考え方はありましたか?

伊田聡輔

HubSpotという企業は”自由”と”責任”を強く押し出した会社です。HubSpotに入社する前は従業員が数万人いる大企業に在籍していたので、社内のルールをしっかりと決めなければ運用が成り立ちませんでした。でも、HubSpotはそうではなくて、「ルール」よりも「価値観」を重視します。

例えば「出張に行く際、自分のお金だったらこの出張は決行するか?」という基準で判断するのは、新しい考え方だなという印象を受けました。

田村慶

HubSpotは、最近ではダイバーシティにも取り組んできた会社だと思います。明確な思想があるからこそ、ダイバーシティが成り立つ面もありますよね。思想が明文化されているからこそ、いろいろな環境の人が働くことができる。ダイバーシティとカルチャーが上手く絡み合っているケースですよね。

伊田聡輔

言われてみればそうかもしれません。ベースはHubSpotのカルチャーコードHEARTかなと思いました。

「(Humble)謙虚である=学べる自分であること」
「(Empathetic)他者を思いやること」
「(Adaptable・Remarkable)相手の違いを受け入れること」

に加えて
「(Transparent)自分はこう思うと表明できること」

この両立っていうのが、ダイバーシティそのものなのではないかなと思います。

どの媒体を使って伝えるかでも、相手の受け取り方は変わる

田村慶

伊田さんはHubSpotを退社されてShopify Japanに入社されましたが、Shopify Japanを選ばれた理由を教えていただけますか。

伊田聡輔

0から作ることに面白さを感じました。Shopify Japanでは今まで一切営業をやってこなかったんです。

良い製品を作り込んで世の中に出すことでお客さんの支持を集めるのではなく、人間がサービスの価値を伝えることでShopifyを使ってもらえる土台を作るということにモチベーションを感じました。

田村慶

当時、Shopifyのプラットフォームはかなり作り込まれていて、ローカライズされて日本でも使われていました。ですが、オンラインでしか販売されていなかったんですよね。

伊田聡輔

はい。当時、Shopifyを購入したい人はパートナーを経由して、あるいはお客様自身がオンラインで購入していました。

インバウンドマーケティングで同じメッセージを伝えるのでも、それをWebに書くのかメールに書くのか、営業パーソンが喋るのかでコンテクストは変わってきます。ということは、Shopifyの魅力を伝える3つ目の手段として人間による営業活動は必要だと感じました。

田村慶

元々Shopify Japanに足りていなかった営業活動をチーム化して進めているんですね。

伊田聡輔

はい。今は営業チームに加え、インバウンドのお問い合わせに対応したり、Shopifyにフィットしそうなお客様に直接対応するセールスコンシェルジュがいます。

田村慶

伊田さんが営業活動を進める上で、最初からお客様の規模感は絞っていますか? それとも指標などを確認して振り分けていますか?

伊田聡輔

そうですね、今のところはある程度の基準を設けています。
正直、今は一定規模以上のすべてのお客様に対して営業することは難しいのですが、だんだん変えていくと思います。Shopifyにフィットしそうな会社に対してこちらから積極的にアクションを起こすことは、今年か来年にも必要だと思っています。

D2Cにシフトして「買う人が必要とする情報を適切なタイミングで提供する」ことが大切

田村慶

今後、ここの業界が盛り上がりそうだ、という予想はありますか?

伊田聡輔

国内においては、本格的なコマースのデジタル化の波はまだ来ていないと思っています。本質的なデジタライゼーションが進んでいくのはこれからでしょうね。日本はショッピングモールなどへの依存度が高い状況にあるので、長期的にはD2Cにシフトしていかないといけないのではないかと感じます。

田村慶

モールに出店するのとShopifyで出店するのでは、なにが変わるのでしょうか?

伊田聡輔

HubSpotでも言えるのですが、お客さんに関する情報やその情報を元にした長期的なお付き合いができるのは、モールに対するD2Cの大きな違いです。モールは膨大な集客力が魅力ですが、単発で終わる傾向が強いんです。テナント自身がお客様に関するデータをなかなか持てないので。

例えばある店舗で冬物のセーターを買ったお客さんがいたとして、昨年も夏物のTシャツを購入している購買データを把握していれば、アプローチの方法はまた変わってきます。

eコマースプラットフォームも、インバウンドプラットフォームも、「買う人が必要とする情報を適切なタイミングで提供するプラットフォーム」だと考えると、思想が似ていますよね。

田村慶

そうなんですね。Shopifyには、ユニークな会社の仕組みなどはありますか?

伊田聡輔

Shopifyではインパクトを大切にしていて、1人の人間が1のアクションで1の結果を出すのではなく、1のアクションから10の結果を出す方法を常に考えようとする傾向にあります。エンジニアリングが原点にある会社だと思います。

一定規模以上の大企業の営業は、「1社の会社から1つの成果を得る」という考え方をしがちです。しかし、どうすればより大きなインパクトを出せるのかを中心に考えるようにすると、これまでの仕事のやり方を見直さないといけないなと考えさせられます。

田村慶

GoogleもHubspotもShopifyも、SMB(中小企業)向けのサービスを重要視して提供してますよね。伊田さんとしては、SMBに興味を持たれていたのでしょうか。

伊田聡輔

いいえ、それはたまたまです(笑)

ソフトウェアが提供する価値のあるべき姿は、小さい会社さんにこそあると思います。

特にSaaSはSMBを助けるものです。人がいない、お金がない現場であってもモダンなマーケティング活動をしたいだとか、誰にでも使いやすいECプラットフォームを作りたいというときに、HubSpotやShopifyなどを利用しますよね。

一方、日本の大企業というのはSMBの集まりみたいなところがあります。日本の大企業がHubSpotを使っていたとしても、全社ではなく事業部ごとに導入されているケースも少なくありません。

大企業も中小企業の集まりだと考えれば、リソースや資金の不足などが理由で、アメリカとかでは受け入れられないような形で導入されていることがよくあります。ある意味、分散的な意思決定のあり方があるのではないかと思います。

日本のボトルネックを解消したいという気持ちを常に抱いている

田村慶

ありがとうございます。今後の展望を伺いたいのですが、Shopifyに限らず伊田さん自身がどうなりたいとお考えですか?

伊田聡輔

振り返ってみると、若い頃にIT企業に転職して最初に取り組んだ仕事がDELLの直販とマーケティングでした。
当時は誰もパソコンを持っていなくて、1台25万〜30万円もする高額商品だったので、1部署に1台が当たり前だったんです。でも、パソコンを導入すると生産性が上がりますよという部分をアピールして、少しずつWord、Excelなどを使うのが一般的な世界に変わっていったんです。

僕の中には、現代の日本社会のボトルネックになっているところや日本人のポテンシャルが発揮できていない理由を解消したいという気持ちが常にあります。ハードウェアであれソフトウェアであれ、世界の市場に目新しく面白そうなソリューションが登場すると、人生のいろいろなステップで興味を持ち続けてきました。

もちろんこれからもShopifyでコミットしてD2Cやeコマースを日本の皆さんに使ってほしいという気持ちはありますが、もしそのステップを卒業したとしても、この社会にあるボトルネックを解消したい、という気持ちでまた新たな取り組みを続けていくのではないかと思います。

田村慶

世界に目を向けるというお話ですが、日本人は英語にコンプレックスを抱きやすいですよね。海外に駐在して外資系企業で働く際に、英語を身につける上で工夫していたことはありますか?

伊田聡輔

実は人生の最初に英語を意識して仕事をしたDELLのマーケティング部門では、相手がなにを言っているのか全くわからなかったんです。ただ、ビジネスにおいて発生するコミュニケーションってある程度限られているので、相手が言っていることを想像して、自分が言いたいことを伝えることにフォーカスして話していました。

相手の話している内容を理解するために努力するよりも、自分の言いたいことを伝えることに意識をおいて努力する。おそらく見当違いな回答もあったとは思いますけど、間違いがあってもあまり気にしていませんでした。

インバウンドは手段ではなく思想であることを意識したマーケティング活動を

田村慶

ありがとうございます。HubSpotのユーザーさんには、本質的なインバウンドを理解している方とまだ理解できていない方がいらっしゃいます。

伊田さんから見て、インバウンドマーケティングを進める上でのポイントを教えていただけますか。

伊田聡輔

HubSpotを退社してからもずっと思い続けているのが、「インバウンドマーケティングは手段ではなくて思想だ」ということです。例えば「コールドコール=アウトバウンドマーケティング」というのは、一見その通りのようで、意外と本質を突いていないのではないかと感じています。

もちろん繋がりのない企業の代表電話に電話する取り組みも、事務作業的にスクリプトを読み続けるコールドコーリングはアウトバウンドマーケティングといえます。

しかし、少なくとも外部媒体から収集できる情報を十分に理解して、雑誌などから連絡を取るべきキーパーソンを見つけて「この人にはこういう情報が必要なんだろうな」と理解して喋るコールドコールは、どちらかというとインバウンドマーケティングに性質が近いと思っています。

HubSpotを導入するといろいろなことができるので、つい次々と新しいことをやりたくなるのですが、HubSpotを使った取り組みが必ずしもインバウンドマーケティングになるわけではありません。

HubSpotのCRMって、お客様の行動履歴が画面の真ん中に表示されていますよね。あれは「お客様の行動履歴をよく見ながら営業してください」というHubSpotの思想であり、強烈なメッセージだと思っています。

田村慶

確かにそうですね。ありがとうございます。

<p>伊田さんは100が運営する「世田谷百貨店」のホットサンドが大好物。</p>

伊田さんは100が運営する「世田谷百貨店」のホットサンドが大好物。

※記事中の部署名、役職名等は掲載当時のものです。

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