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HubSpot AIで自動QAスコアリングを実装する方法

電話の問い合わせ対応を、自社の品質基準でAI採点する方法。HubSpotのコミュニケーションインテリジェンスで文字起こし・要約し、Claudeで採点してCalls APIでコールに書き戻し、担当者別に可視化する。

対象読者

  • 電話の問い合わせ対応(インバウンド)の品質を、属人的なモニタリングに頼らず仕組みで評価・改善したいカスタマーサポート責任者・コールセンターマネージャー
  • 担当者ごとの対応品質のばらつきを可視化し、育成・フィードバックに活用したいサポートチームのリーダー

この記事で扱うQAの範囲

QA(品質評価)にはいくつかの観点があります。本記事が対象とするのは次の通りです。

  • 対象業務 :電話(音声)でのインバウンド問い合わせ対応。顧客の問い合わせ・トラブルをその場で正確に理解し、解決するカスタマーサポート/ヘルプデスクのオペレーターの通話が対象です。
  • 評価する観点 :「話すべき内容が話されているか(内容コンプライアンス)」。例:本人/用件確認、課題の正確な把握、適切な案内、解決確認など。
  • 対象外 :「えーと」「あー」などのフィラーや話速といった話し方(デリバリー)は対象外です。これらはHubSpotのコミュニケーションインテリジェンスが別途数値で可視化します(速度・トーク比率・モノローグ等。関連:No.42)。
  • 想定しない役割 :本記事はサポート(問い合わせ解決)が対象で、カスタマーサクセス(CSM)の活用支援・関係構築や、営業の商談コーチング(No.42)とは評価基準が異なります。

概要

電話のインバウンド対応をQAスコアリングするには、(1) 通話を文字起こしし、(2) 自社の品質基準で各通話を採点し、(3) 担当者別に可視化する、という流れになります。

HubSpotのコミュニケーションインテリジェンスが通話を自動で文字起こし・要約します。ただしHubSpotには通話を品質基準で採点する専用のQA機能はありません。そこで採点はClaudeで行い、結果をHubSpotのCalls API(コールの更新)でコールのカスタムプロパティに書き戻して、カスタムレポートで担当者別に可視化します。採点はClaude側で行うため、HubSpot(Breeze)のクレジットを消費しません

前提条件

  • HubSpot Sales Hub または Service Hub Professional以上 — コミュニケーションインテリジェンス(通話の自動録音・文字起こし・要約)の利用に必要
  • 電話(音声)で問い合わせ対応を行っていること。対象の通話プロバイダー(HubSpot通話/Zoom など)が接続され、通話録音・文字起こしが有効になっていること
  • Claude(生成AI)。通話データの読み取りにはHubSpot MCP(読み取り)またはAPIを使う
  • コール書き込みスコープを付与したHubSpotプライベートアプリ(アクセストークン) — 採点結果をコールに書き戻すために、Calls API(コールの更新)を使う
  • コール(通話)オブジェクトに採点結果を保存するカスタムプロパティを作成できる権限

実装手順

ステップ1:自社の評価基準(採点基準)を定義する

電話のインバウンド対応をどの観点で評価するかを決める。最初は5〜6項目に絞り、運用しながら調整する。

品質基準の例(サポート/ヘルプデスク向け):

  • 挨拶・本人/用件確認 — 名乗り・適切な導入ができ、用件を確認できているか
  • 傾聴・課題の正確な把握 — 顧客の問題を正しく理解できているか
  • 適切な解決策・案内 — 正確で過不足のない案内・解決策を提示できているか
  • わかりやすい説明 — 専門用語をかみ砕くなど、相手に伝わる説明ができているか
  • クロージング・満足/次の手順確認 — 解決の確認・次の案内・お礼ができているか
  • (任意)言葉遣い・共感 — 丁寧さ・寄り添う姿勢があるか

※採点の観点はあくまで「自社の品質基準」。営業の商談を採点したい場合は、提案・ネクストステップ・クロージング等に基準を差し替えればよい。

各項目を1〜5点で評価し、合計を品質スコアとする。コール(通話)オブジェクトにカスタムプロパティを作成する:

  • QA:本人/用件確認 (数値・コールオブジェクト)
  • QA:傾聴・課題把握 (数値・コールオブジェクト)
  • QA:解決策・案内 (数値・コールオブジェクト)
  • QA:説明のわかりやすさ (数値・コールオブジェクト)
  • QA:クロージング (数値・コールオブジェクト)
  • QA:合計スコア (計算プロパティ・上記の合計)

ステップ2:コミュニケーションインテリジェンスで通話を蓄積する

コミュニケーションインテリジェンスを有効にし、通話を自動で文字起こし・要約する。

設定のポイント:

  • 対象の通話プロバイダー(HubSpot通話、Zoom など)を接続する
  • 録音・文字起こしの自動化を有効にする(設定 → コール → コールの設定)
  • 各通話には、AIが生成した通話要約(目的・主要な論点・センチメント等)が自動で付与される。この要約が次のステップの採点の入力になる

ステップ3:Claudeで採点し、HubSpot APIでコールに書き戻す

対象コールの情報をClaudeに読み取らせ、ステップ1の評価基準で採点させる。採点結果は、HubSpotのCalls APIでそのコールのカスタムプロパティに書き戻す。

処理の流れ:

  1. 対象コール(例:文字起こしのある特定期間の通話)の情報を取得する。読み取りはHubSpot MCP(読み取り)またはAPIで行い、採点の入力には各コールのAI通話要約を用いる
  2. Claudeに評価基準の各項目を1〜5点で採点させる
  3. 採点結果(各項目スコア)を、Calls APIの更新(PATCH /crm/v3/objects/calls/{callId})で、そのコールのカスタムプロパティに書き戻す。担当者を特定できるよう、コール所有者(担当者)も合わせて参照する

書き戻しはコール書き込みスコープを付与したプライベートアプリのアクセストークンで実行する。読み取り専用・存在しないプロパティは無視されるため、事前にステップ1のカスタムプロパティを作成しておく。

採点プロンプトの例:

  • 以下のサポート通話の要約を読み、次の5項目を1〜5点で評価してください
  • 評価基準:1点=該当行動がまったく見られない/3点=基本的にできているが改善余地あり/5点=優れた対応
  • 各項目のスコアのみを数値で出力してください(理由は不要)

採点はClaude側で行うため、HubSpot(Breeze)のクレジットは消費しない。通話件数が多くてもクレジット面の制約を受けにくい。

ステップ4:カスタムレポートで担当者別に可視化する

コールに蓄積されたスコアを、カスタムレポートでダッシュボード化する。集計軸は担当者(コール所有者)

作成するレポート例:

  • 担当者別の平均スコア(棒グラフ) — 誰の対応品質が高いか・低いかを一覧化
  • 担当者別スコア推移(折れ線グラフ) — 改善傾向やコーチング効果を時系列で追う
  • 項目別の平均スコア(レーダーチャート/棒グラフ) — チーム全体で弱い項目を特定する(例:傾聴は強いが説明のわかりやすさが弱い)
  • スコア分布(ヒストグラム) — ばらつき度合いを確認

ダッシュボードは1on1やチーム定例でのフィードバック材料として活用する。

ステップ5:Sales Coach Assistantでセルフコーチングする(任意)

Breezeマーケットプレイスから Sales Coach Assistant を追加すると、担当者が自分の通話についてAIにフィードバックを求められる。

使い方:

  • 通話ログを開き、「この通話で良かった点と改善点は?」と質問する
  • AIが通話内容を分析し、コーチングレポートを生成する

マネージャーのフィードバックを待たずに担当者自身が振り返れる。スコアリング(ステップ3〜4)とは別の、読み取り・自主学習ツールとしての位置づけ(スコアは格納しない)。

補足:より厳密に採点したい場合

  • 逐語の全文で採点したい場合 :ステップ3の採点はAI通話要約をもとにしている。要約ではなく逐語の文字起こし全文で採点したい場合は、コミュニケーションインテリジェンス/HubSpot APIから文字起こし全文を取得してClaudeに渡す(全文はコールのプロパティには保存されていないため、別途取得が必要)
  • HubSpot内で完結させたい場合(簡易・粗い代替) :ワークフローの「データエージェント:調査」アクションでも近似的な採点は可能。ただし対象が「コンタクト等に紐づく直近5件の通話のまとめ」になり1コール単位の採点にはならず、実行ごとにHubSpotクレジットを消費する。コール単位の厳密なQAには不向き

注意点

  • HubSpotには通話を品質基準で採点する専用のQA機能はない。本記事はコミュニケーションインテリジェンス+Claudeによる近似的な自動評価であり、専用QAツール(Klaus、MaestroQA等)と同等の精度を保証するものではない。大規模・本格運用では専用QAツールも選択肢
  • ステップ3の採点はAI通話要約に基づく。要約の粒度に評価精度が依存する(逐語全文で採点したい場合は補足を参照)
  • AIによるスコアリングは参考値として扱い、重要な人事評価には直接使わない。マネージャーによる確認・補正を前提とした運用を推奨
  • 品質基準は定期的に見直す。最初から完璧を目指さず、運用しながら項目や配点を調整する
  • コミュニケーションインテリジェンスの文字起こし精度は通話環境(音質・話速)に依存する。精度が低い通話はスコアの信頼性も下がる
  • 採点結果をコールに書き戻すには、コール書き込みスコープを付与したプライベートアプリのアクセストークンでCalls APIを呼び出す(HubSpot MCPは読み取りに利用)

関連機能

  • コールインデックスでコールを確認する — コミュニケーションインテリジェンスの通話分析・要約
  • セールスコールコーチング — 営業通話のコーチング、および話し方(トーク比率・速度等)のネイティブ指標
  • 顧客の声分析 — 顧客フィードバック全体のテーマ分類・傾向分析
  • スマートルーティング — 対応品質スコアを担当者の自動振り分け条件に活用する