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INBOUND22 HubSpotキーノート〜断絶の危機と顧客とつながる時代

INBOUND22 HubSpotスポットライト2022年9月7日から9日までHubSpotの年次イベント「INBOUND 22」が、ボストンのコンベンション&エクシビションセンターとオンラインのバーチャル会場で、初めてのハイブリットイベントとして開催されました。大注目セッションの一つは、初日の「HubSpot スポットライト」。HubSpotが現在注目している問題と解決策が提言され、またHubSpotの新機能が発表されました。

今年のテーマは「Crisis of Disconnection(断絶の危機)」で、その解決策は「Connect dots(ドットのつながり) = コミュニティー」。スポットライトは3部構成で、まず始めにHubSpot CEO ヤミニ・ランガン氏によるキーノートスピーチ「断絶の危機と顧客とつながる時代」、CPO(最高製品責任者)ステファニー・カスバートソン氏による新機能の発表、そしてCTO ダーメッシュ・シャア氏による「新コミュニティー:Connect.com」発足の発表がありました。

inbound22-spotlight2キーノート後に会場を見渡して、丸いものはドットの伏線かと思ってしまいました(!)
今回は「コミュニティー」をテーマとするセッションも多くありました

新機能の発表は「INBOUND 2022 HubSpotアップデート速報」のブログでお伝えしたので、ここでは「Crisis of Disconnection」と「Connect Dots」についてお伝えします。

企業の成長を阻む3つの断絶:システム・人・顧客

ヤミニ・ランガン氏は、顧客や従業員に6週間でヒアリングを実施した結果、3つの断絶が企業の成長を妨げているという結論に至りました。
コロナ禍で企業のデジタル化が急速に進み、リモートワーカーが増えるなど、私たちの働き方は大きく変わりました。そのことで、フライホイールが止まりかけている、つまり成長のスピードが落ちてきていると感じているという声があったそうです。成長を妨げる断絶とは次の3つです。

1.企業とシステムの断絶
企業は今や非常に多くのSaasアプリケーションを業務で使用し、その数は平均で242もにもなります。問題なのはアプリの数が多いことではなくシステムがつながらなくなること。データが連携できないと仕事は停滞し、作業は非効率になり、フラストレーションが生じます。

2.人と人との断絶
コロナ禍では仕事上での人との関わりや社会活動が減少し、人との断絶が生じています。同じ問題を抱える母親同士のコミュニティー、スキルアップするためのスタディーグループ、仕事上の問題を解決するビジネスのコミュニティーなど、人々は互いを支え合う環境を必要としています。

inbound22-spotlight3職場での交流は45%減少し、社会的活動は57%減少しました

3.企業と顧客との断絶
昨今、ブログもメールも広告も人々に届きません。前は楽しみにしていたお気に入りのブランドのニュースレターも今ではすぐにスパム行きです。誰もがデジタル疲れの状態にあり、ランガン氏はこれを「Digital Overload Mode」と表現していました。またプライバシーに関する考え方が変わってきていて、人々は無料コンテンツを入手するためにEメールアドレスを入力することが価値に見合っていないと感じています。

これまでのGTM戦略(市場進出戦略)はうまく機能しなくなりました。HubSpotはCRM(Customer Relationship Management)を取り扱っていますが、顧客は管理(Customer Management)するものではなく、「顧客とつながる(Customer Connection)」というマインドが企業を成長へと導くのです。

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顧客のデータを集めることよりもコンテキストを深く理解し、コンテンツを作成するよりも顧客とつながり、コンタクトを得るよりもコミュニティーに参加することが必要とされているのです。具体的には、HubSpotのフライホイールの考えにしたがって、「Attract」「Engage」「Delight」の各ステージでやるべきことのアドバイスがありました。(詳しくは動画をご覧ください)

HubSpotの共同創業者であり現在チェアマンであるブライアン・ハリガン氏は、インバウンド期間中に実施された弊社とのミーティングのなかで「インバウンドマーケティングの基本であるコンテンツ×コンテキストをより高く深いレベルで実践していく必要がある」と話されました。昨今顧客にコンテンツを届けることは容易ではなくなり、顧客はよりパーソナライズされた情報を欲しているのだと感じました。

3つの断絶(Disconnection)に対してのソリューションとして、3つの強力なつながり(Connection)の言及がされました。

1.アプリケーション(Connected Applications)
2.プラットフォーム(Connected Platform)
3.コミュニティー(Connected Community)

inbound22-spotlight5自社で利用している様々なアプリケーションを接続するだけでは十分ではなく、連携されたプラットフォームを用いて業務を遂行すること。またマーケティング・セールス・サービスの各部署は独立してはいけません。各部署が異なるCRMを導入しているのであれば、顧客との溝が広がり業務がスムーズに進行しません。この話は、INBOUND22で多く取り上げられたレベニューオペレーションの考え方そのものです。

断絶されたドットをつなぐ「コミュニティー」が企業の成長を促進する

ダーメッシュ・シャア氏のキーノートでは、自身のコミュニティー運営の経験を交えながら、理想のコミュニティー像と新コミュニティー「Connect.com」の発表がありました。inbound22-spotlight6シャア氏は、自身のコミュニティー運営や家族の誕生と別れの経験をオーディエンスと共有しました。個々人をドットで表し、「コミュニティーはドットをつなげるものだ」と説明。メンバーが所属する価値を感じるためにコミュニティーは必ずしも大きくある必要はなく、ドット(メンバー)同士がつながっていることが大切なのです。

inbound22-spotlight8ダーメッシュとブライアンは「BDF(ベスト・ドット・フォーエバー)」(笑)

inbound22-spotlight9「断絶の危機」もコミュニティーが助けとなります

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コミュニティーに属するということは、「誰であるか」「どこにいるか」「どれほど数字を持っているか」などは関係ありません。誰もが価値があり、価値を提供でき、価値を享受できるのです。パーソナルなコミュニティーでも仕事に関するプロフェッショナルなコミュニティーでも同様です。

The Evolution Value Led Growth(企業を成長へと導くもの)

inbound22-spotlight11左のセールスパーソンはブライアンですね!

HubSpotを成長へと導いてきた 「INBOUND」の価値の進化について、以下のように説明がありました。

1. Sales Led Growth(営業)
優秀な営業担当者は単に製品を売るのではなく、顧客の相談相手となり顧客の課題を理解し、解決方法を提供することに価値があります。

2. Marketing Led Growth(マーケティング)
ブログ、ホワイトペーパーや動画のような「コンテンツ」が価値に追加されました。マーケティングは営業に置き換わるものではなく、 営業に燃料を注ぐものです。

3. Product Led Growth(製品)
優れた製品が企業を成長へと導きます。ここでの価値は「コード」です。HubSpotの場合は、無料のCRMやアプリケーション連携を提供しています。

4. Community Led Growth(コミュニティー)
そしてコミュニティーです。ここで追加された価値は、「コネクション(つながり)」です。問題が生じたときに一人でジタバタするのではなく、オンラインでもオフラインでも誰かメンバーの肩をたたいて尋ねることができます。アイデアや体験を共有することで価値が高まります。

理想のプロフェッショナルコミュニティーとは

inbound22-spotlight12コミュニティーの潜在価値を最大化するための理想(IDEAL)のコミュニティー像についての考えが共有されました。

1. Identity
所属している会社や学校を単に知っているというだけではなく、より深く自分が求めるもの探しているもの、気にかけているものを認識することです。

2. Diversity
コミュニティーには、共通の関心ごとがあり、異なるバックグラウンドや経験を持った人が集まります。自分とは違う役割、文化、業界、地域の人との交流はより高い価値を生み出すでしょう。

3. Engagement
コミュニティーメンバーはお互いにエンゲージできる場を求めています。

4. Action
コミュニティーにはアクションが必要です。コミュニティー内で製品やコンテンツを売り買いできるマーケットプレイスがあるべきです。

5. Learning
コミュニティーは、学びたいことと製品やコンテンツのドットをつなぐ学びの場でもあります。

HubSpot Connect (Connect.com)の発足

inbound22-spotlight13HubSpotは、顧客の課題を解決するために優れたソフトウェアを提供しています。それだけでは十分ではなく、長期間に渡りたくさんのコンテンツも公開しています。これでも十分ではなく、もう一つの必要な要素はコミュニティーです。

そこで、HubSpotは新しいコミュニティー「HubSpot Connect.com」をリリースしました。ネットワーク、アカデミー、マーケットプレイスが一つになったコミュニティーです。無料で登録できる完全にオープンなコミュニティーです。一人では実現できないことも、多くの人とつながることで実現することができるでしょう。

inbound22-spotlight7ダーメッシュのドットTシャツにこだわりを感じる!靴下もドット柄

常に顧客を中心に成長を続けるHubSpot。今回のHubSpotスポットライトのキーノートを聞いて、言葉に違わずHubSpotユーザーやパートナーの声が製品開発やサービス提供に反映されていると強く感じました。今後のアップデートやイベントにも期待です!

若本 怜子

株式会社100(ハンドレッド)のPR兼カスタマーサクセス、時々マーケター。HubSpot歴11年。2023年7月に株式会社100から出版された『HubSpot大百科』の執筆を担当。

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